身体のこと~for Body

回らないところを回そうとして、痛い! 身体の構造~肘

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マッピングの錯誤

人は、頭にあるイメージをもとに、身体を動かそうとする。
しかし、実際の身体の構造が、イメージとかけ離れていたら…。
これをマッピングの錯誤と呼ぶのだけど、これで、痛みが生じている可能性もある。
だから、ちょっと身体の構造を見直してみよう。
知るだけで、楽になる事例は、案外多いものだ。

今回、取り上げるのは、肘。
野球肘、テニス肘など、スポーツで肘を痛める人がいる。
腱鞘炎みたいな症状も肘と関係がある。
それから、楽器を演奏する人なら、どこか窮屈さを感じたり、無理な力を使っているかもしれない。
こうしたことが、肘の構造理解によって、軽減、予防、あるいは楽な感じにつながる。
だからといって、事細かな解剖学は必要ない。
知ってほしいのは、大まかなイメージとして、次の2点だけ。

1.肘関節は、一方向に曲げ伸ばしできるだけで、回転はしない。
2.力は、手の小指を目指す。

では、頭の地図を書き換えていこう。

肘の骨格図

elbow

腕の骨格図を提示した。
この図は、右腕と左腕、どちらの骨かわかるだろうか?
腕の骨は、触りやすいから、できれば、自分のか、身近な人の腕を触って確認してみるといい。
そうやって、自分の頭にあるイメージと実際の違いを分かろうとしながら、この文章は読むといいんだ。
さあ、図の腕は、右腕か左腕か…。

答えは右腕。
右端の図で、関節のはまり具合と、骨の位置関係が見て取れるからだ。
血液検査のときを思い浮かべてみよう。採血の時に、右腕を差し出したとする。この際のポジションを3方向から見た図になっている。
1番左の図は、手のひら側から見た図。
真ん中は、親指側の横から見た図。
右端の図は、手の甲側から見ている。

ご存じのように、肘関節は、肩と手首の中間にある。
肩から肘までの二の腕の骨が、薄い青で描かれている上腕骨だ。
肘から手首までの前腕と呼ばれるところには、2本の骨がある。
親指側に、橈骨(とうこつ)、小指側に、薄い赤で描かれている尺骨(しゃっこつ)だ。

さて、ここで気づいてほしいのは、上腕骨(青)に接続しているのは、尺骨(赤)だけだということだ。右端の図がよく表しているように、尺骨は、ばっちり、かっきり、上腕骨に引っかかるようにつながっている。
ここがどこにあるか、触って確認してほしい。ちょうど、肘鉄として使われる場所だ。本当は肘頭(ちゅうとう)って言うけど。
それに引き替え、橈骨は、尺骨に寄り添うように添えられているだけだ。(知識のある人は、腕橈関節とかを気にするかもしれないが、ここで、そんな細かいことは必要ないんだ。)

こうして、橈骨と尺骨の位置関係、肘頭の位置がわかれば、右腕か左腕かが判別できる。
そして、この位置関係こそ、注目してほしい重大ポイントだ。

肘関節の動き~曲げ伸ばし

骨の配置が分かったところで、動きの確認をしよう。

まず、曲げ伸ばしだね。
人によって、個性や事情があるので、ばらつきがある。
まあ、大多数の人は、伸ばせば180度ぐらい。
曲げれば、肩に指先が触れるくらいだろうね。
で、ここに問題はないと思う。
イメージと実際は、ほとんど一致しているよね。
ほとんどって言ったのは、あれ、思ったより曲がらないなんてことに気づくかもしれないからさ。
関節って、普段動かしてる範囲では楽に動くけど、それを越えて動かそうとすると、きつくなる。
特に年を取ると…。

肘関節の動き~キラキラ星

ここからが、問題。この文章の要。
elbow-hands-1以下の動きで、肘関節は、どのように動くか。

肩関節の影響を少なくするために、肘を90度ぐらいに曲げて、観察してみることにするよ。

① 大事な物を受け取るときや、本を持って読書するときのポジション。手のひらが上を向いていて、親指が外側にある。
② パソコンのキーボードをたたくときや、たき火に暖まるときのポジション。手のひらが下を向いていて、親指が内側にある。

簡単に言えば…、写真を載せた。
手の甲が上になっているポジションと、下になっているポジションが同時に写っている。これを交互に繰り返せば、キラキラ星になる。
つまり、こういうこと。①→②→①→②→…。
この動きを、多くの人が、羽生選手の華麗なスピンのように、肘関節がクルクル回っていると錯覚しているのではないだろうか。
工場で働くロボットなら、そういう動きをするのだけれど…。
肘をつかみながら、ゆっくり動かして、観察してみてほしい。
筋肉は動く。
親指側の橈骨もグリグリ動くのを感じるだろう。
けれども、小指側の尺骨の動きを感じられるだろうか。
次に手首をつかみながら、同じように動かして、観察してみてほしい。
橈骨と尺骨はダンスする。

わかるだろうか。
親指側の橈骨が、小指側の尺骨を越えて動いている。
尺骨に対し、橈骨がクロスしたり、平行になったりして、この動きはできている。
実際は、肩関節や手首の関節の動きも加わる。けれども、主な動きは、こうした2つの骨の位置関係による。
まるで、ダンスのように。
寡黙な尺骨の周りで、華麗な橈骨がポーズを決める。

さらに、この動きの軸はどこにあるか。
尺骨の周りを橈骨が動くのだから、軸は尺骨にある。だが、どの指に相当するだろう。
もう少し観察してみよう。
キラキラキラ…。

そう。小指だ。
手首を傾けることで、人差し指など他の指を軸に見せかけることもできるが、本来は小指と言っていい。
そして、思い出してほしいが、上腕骨としっかりつながっているのは、小指側の尺骨だ。
つまり、力は小指を目指す。

ゴルフクラブを握るときは、小指でしっかりと言われなかっただろうか。
テニスラケットを握るときは?
竹刀を振るときは?
柔道で、相手の襟を取るときは?
ボールを握るときは?
雑巾を絞るときは?
包丁を握るときは?
楽器を持つとき、あるいは触れるときは?

そうだ、小指が主導する。
そして、肘を回さない。尺骨に橈骨がクロスする。あるいは平行になる。

このイメージを練習するだけで、フォームはきれいになり、肘への負担は激減するはずだ。

まとめ

肘関節についてだったが、そこから導き出される指までの関係を記述した。
少しまとめてみょう。

肘は、一方向へ曲げ伸ばしのできる関節。

手のひらを返す動きは主として、尺骨に対しての橈骨の動きだ。
「平行→クロス」の動きを回内(かいない)と呼ぶ。
「クロス→平行」の動きを回外(かいがい)と呼ぶ。

パワーの担当は、小指と薬指。
巧緻性(器用さ)の担当は、親指、人差し指、中指。

荷物を持つとき、つり革につかまるとき、小指を意識しよう。
最近、巧緻性担当が、多用されすぎて疲弊している。腱鞘炎などと診断されたりもする。
そんなとき、小指に意識を向けてみよう。
たとえ、使うのは親指だとしても、小指の先に親指が付いているのだと思って使ってみると、疲れ方が違うことに気づけるだろう。
手・腕を動かすときは、小指を意識するといい。

指と意識の関係を確かめるには、次の実験をやってみよう。

・親指に意識をおいて握手。
・小指に意識をおいて握手。
この2つを相手に知らせずにやってみる。あるいは、相手にやってもらう。
どんな違いを感じるだろう?

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